天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「く!」

補修魔法によって、急ピッチで修繕される校舎を見上げながら、九鬼は顔をしかめていた。

乙女ケースが、何者かに奪われたからだ。

いや、奪ったとしたら…あの男しかいない。

探しにいこうとする九鬼の横に、カレンが立った。

「気付いたか?」

一つ目の巨人が破壊した窓側の壁を見上げながら、カレンはきいた。

「?」

九鬼には、質問の意味がわからなかった。

カレンは、九鬼が答えるのを待たずに、

「さっきの巨人は、いきなり現れた。テレポートしてきたでもない。突然わいたんだ」

「!」

九鬼は驚き、カレンの横顔を見た。

「やつが、現れた時…やつの足下にだけ…亜空間が開いていた」

カレンは視線を、足下に移動させた。

先程の襲撃の時、カレンも教室にいた。

しかし、巨人の足下から漂う邪悪な気を感じて、動けなくなったのだ。

巨人よりも、恐ろしいものが出てくるような気配を感じて、どう動くべきか迷ってしまったのだ。

「亜空間?ま、まさか」

九鬼の頭に、先日の実世界へと繋げた…兜の計画がよみがえった。

人間の魂を捧げて、異空間と繋げるのだ。

「あれとは、違う」

カレンは否定した。 足下を蹴ると、

「世界そのものを繋げるのではなく、もっと小さな穴を開けたようなものに感じた」

地面を削った。

「どういう意味?」

九鬼がきいた。

「つまり…」

カレンは削るのをやめると、

「この学園の地下には、何かあるということだ」

ブラックカードを取り出した。

「こ、これは?」

九鬼はまじまじと、カードを見た。

カードが使えなくなってからも、ブラックカードの存在だけが都市伝説のようになっていた。

今でも、無限に魔力を使えるカードと。

しかし、実際は無限ではない。

直接魔物と戦い、奪った魔力分しか使えないのだ。

カレンは、カードのボタンを押した。

「ジャスティンなら、何か知ってると思ったんだけど…ここ数日、繋がらないんだ」

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