天空のエトランゼ〜赤の王編〜
そんな三人の緊張を理解したのか…前から歩いてくる美亜は、うっすらと口元に笑みを浮かべた。

そして、四人を見ることなく、左に曲がった。

「!?」

一番接近した時、高坂の心臓がまた…一瞬だけ止まった。

(誰だ?)

心の中で問いかけた。普段ならば、尾行して後を追い、クラスと名前を確認するのだが、足が動かなかった。

「あのお〜!すいません」

口惜しく絶望している三人とは違い、軽く足取りで輝が、遠ざかる美亜にかけ寄った。

足を止め、振り返る美亜に、笑顔で輝は何かをまくし立てた。

美亜がクスッと笑うと、輝は頭を下げた。

スキップで、高坂達のもとに帰る途中、美亜の方に振り返ると、手を振った。

美亜も、笑顔で手を振り返した。



「いやあ〜!あれは、絶対当たりですよ!眼鏡で隠された美貌!僕は、騙されません」

三人の前に戻った輝は満面の笑顔を三人に向けた。

「お、お前」

緑は、輝を指差した。指が震えている。

「この学園の美人は、すべて把握する!それが、僕の掟ですから!ははは!」

と嬉しそうに笑う輝とは対照的に、頭を抱える緑と服部。

「…で」

だが、高坂だけは違った。

「彼女の名は?」

高坂の質問に、輝は答えた。

「一年C組、阿藤美亜さんです!趣味は…なんか、あるものを集めていると…何かの力…」

「力?」

高坂は眉を寄せた。

「すいません!忘れましたっていうか!聞いてなかった」

輝は頭をかき、

「眼鏡の奥に、あまりにも美しい瞳を発見しまして、自分の勘に狂いはなかったと感動しまして」

「あほか!」

緑は、嬉しそうな輝の頭を小突いた。

「情報倶楽部失格でござるな!」

緊張から解放された服部が、ため息をついた。


「何かを集めている?」

高坂は顎に手を当てた。

真実を言っていないとは思うが、どうしてそんなことを初対面の輝に告げたのか…その真意がわからなかった。


「阿藤美亜…」

今までまったく目立たなかった美亜という存在が、高坂の頭を残った。

そして、それは…すべての始まりを意味していた。



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