天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「遅い!」

突き出されたピュア・ハートが、カレンの心臓を狙った。

「!」

一瞬の出来事で、回避行動もできない。

「カレン!」

九鬼の姿が消えた。

音速を超えて、中西の邪魔をしょうとしたが、突きの速さが上回った。

それでも、横から中西に蹴りを叩き込み、ふっ飛ばした。

中西を肩で、蹴りをガードしていた。

「フッ。やりおるわ」

その手には、ピュア・ハートはなかった。

「カレン!」

慌ててカレンの方を見た九鬼は、驚愕した。

ピュア・ハートは突き刺さってはいたが…心臓には届いていなかった。

無意識に重ねた手と手で、突きを受け止め…両手ほ串刺しにはなっていたが、胸に刺さった部分は浅く、心臓には届いていなかった。

それに、九鬼の蹴りが、ピュア・ハートをさらに押し込む行為を邪魔したことで、命拾いしたのだ。

「カレン…」

九鬼は、突き刺さっているピュア・ハートを一気に、カレンから抜き取った。

「九鬼…お、お前」

カレンは九鬼の姿を見て、目を見開いた。

「わかっているわ」

九鬼はピュア・ハートの先を、カレンがつけているペンダントの碑石に当てた。

すると、ピュア・ハートは碑石の中に消えた。

命拾いしたが、戦うことができなくなったカレンは、中西の方に顔を向けた。

「厄介な相手だぞ」

「わかっている」

九鬼は頷くと、カレンから離れ、中西に向かって構えた。

「やるというのか?その姿で」

中西は笑った。

「ええ」

九鬼はゆっくりと、拳を突きだし、指を開くと手招きした。

「その癖は、生まれ変わっても変わらんな」

中西は目を細め、

「それだけではない。その無謀さもだ!」

手刀をつくると、一気に襲いかかってきた。

「ま、まゆみ!」

カレンは、動かない両手をぶらんとさせながら、九鬼の背中に叫んだ。

「は!」

九鬼は気合いを込めると、前に出た。
< 268 / 1,188 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop