天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「肌から…変な液体が染みだし…着ていた衣服を、びしょびしょになったわ」

半魚人…ウーパールーパーにも似たその姿は、先程の絵里との落差がありすぎた。

顔だけは、ほぼ同じであるが、エラが張っていた。

身に付けていた衣服は、僕から飛び出した時に脱げたようで、2人の間に落ちていた。

「この姿になっても、部屋に引きこもっていたら…最初のうちは、いつのまにか元に戻っていた。だけど…高3になると、戻らない部分がでてきた!」

絵里は絶叫した。

「こんな体じゃ!何もできない!演技だけじゃない!好きな人といっしょになることも!」

「矢崎さん…」

僕の瞳の色が、もとに戻った。

「絶望したわ!どうしてなのかと!死ぬことも考えたわ!だけど…だけど!そんな時…あの方に会ったの」

泣き叫んでいた絵里の目に、よどんだ光が見えた。

「あの方?」

僕は一歩前に出た。

「そうよ!あの方は、わたしの変化の理由を教えてくれた。それは、人類の進化!人類をさらに別の次元まで、押し上げる進化だと!」

「進化だって?あり得ない…。なぜなら!」
「あなたには、わからないわ!」

絵里の叫びが、僕の言葉を遮った。

「あなたは、この世界を捨てたから!」

「僕が、この世界を捨てた?」

意味がわからなかった。

舌打ちすると、絵里を気にしながらも周りに、人がいないことを確かめていた。

メールが来た人物と会う場合…人目のない場所を選んでいた。

気を探り、誰もいないことを確かめると、僕はさらに前に出た。

「興味深いな…その話。詳しく訊きたい」

僕の言葉に、絵里は目を丸くした。

しばし…会話が止まった。

(仕方がない…。頭に直接きくか)

手を伸ばし、絵里の頭に触れようとしたら、絵里の胸から白い液体が飛び出して来た。

「な!」

よけることができずに、服に液体がつくと…繊維を溶けた。

と同時に、先程よりは百倍も凄い匂いが立ち込め、下から直接…鼻腔を刺激した。

がくと膝を落とした僕の頬を、冷たくひんやりとした絵里の手が触った。
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