天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「貫け!」

天井に突き刺さったピュアハートは、丸太を喰った。

一瞬で穴が開き、カレンは屋根の上に着地した。


「な、なんだ…」

小屋の周りを埋めつくす木製の人形達。

あまりに精巧過ぎて、肌が木の色でなければ、人間だと思っただろう。

「どうなさいましたか?」

下から女がきいた。

「どうなさいましたかじゃあないだろ!」

カレンは、状況判断に躍起になった。

女は人形ではないようだが、周りを囲む人形は明らかに増えていた。

いつのまにか、村中が人形だらけになっていた。


「騙したのか!」

カレンは屋根の上から、女に叫んだ。

「魔神に狙われていると!」

「騙してはいません!」

女は屋根を見上げながら、

「魔神ムゲは、この村を排除しょうとしています!人間(餌)がかからないこの村を!だから!」

女の周りにいた人形達が、女を持ち上げ、屋根へと上がらす。

「あなたのような…強い人間の精気を吸えば…きっとムゲも、この村を残してくれる」

屋根の端に手をかけると、屋根に上がってきた女は、カレンに笑いかけた。

だけど、カレンは気づいていた。

女の目の隅に、涙が溜まっていることに。


「…」

無言で女の前に飛び込んだカレンは、ピュアハートを女の胸に突き刺さした。

「あ…」

胸から背中までを貫いたピュアハートを見た時、女の瞳から涙が流れた。

そして…カレンがピュアハートを抜くと、

「ありがとう…」

女は感謝を述べ、屋根から落ちた。

人形達の上に落ちた女の体は、すぐに干からびた。勿論…血は流れなかった。


「チッ」

カレンは舌打ちした。

そして、悠然とそびえる大木を睨んだ。

「貴様が…元締めか」

カレンは、ピュアハートの剣先に指を添えると、刀身をしならせた。

「ブッタ斬る」

まるでブーメランのような形になると、カレンは大木に向けてピュアハートを投げた。

回転するピュアハートが、大木の枝を切り裂いていく。
< 43 / 1,188 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop