天空のエトランゼ〜赤の王編〜
男はそう言うと、どこからか…木箱を取りだし、ジャスティンに差し出した。

「これを…あなたに」

男から、受け取ったジャスティンは木箱を開け、目を見開いた。

「これは!?」





数時間後、ジャスティンは洞穴を後にしていた。

「行きましょうか」

ジャスティンの後ろには、エルフの女がいた。


エルフの男は、ジャスティンに木箱を渡すと、数分後に死んだ。寿命だった。

死ぬ間際…男は、女をジャスティンに預けた。

「私の孫を…お願いします。この子は、純粋なエルフではございません。私の娘と…クラークの間に生まれた子供です」

「え!」

ジャスティンは、そのことが一番驚いた。

「と言っても…2人が愛し合った訳ではございません。特殊な人間であった彼とエルフが交われば…どんな子供ができるのか…。クラークの精子を使って、実験されたのです。彼も…この子に会うまでは、知りませんでした」

男の話で、ジャスティンは納得した。

(だからか…)

男は、ジャスティンの手を両手で握り締め、

「彼の特殊な遺伝子が、この子のエルフの血を際立たせました。強力な魔力を持ちますが…人間でもあるのです」

すがるように、言葉を続けた。

「私は…もうすぐ死にます。どうかこの子を!私が死んだら、この子だけで、あれを守る羽目になっておりました!こんな穴蔵で!あ、あなたが…来てくれてよかった!ありがとうございます!」

涙を流し、何度も懇願した。

「わかりました」

そして、ジャスティンが頷いたのを見て…安心したのか、男は死んだ。

ずっと無表情で、男のそばにいた女は、彼が亡くなった瞬間、泣き崩れた。

死ぬ寸前だった祖父に、弱いところを見せたくない気持ちが、無表情にさせていたのだろう。

ジャスティンは、彼を村の裏手にある墓地に埋葬した。そして、十字架の並ぶ墓地の真ん中で、女にきいた。

「君の名前は?」

ジャスティンの質問に、女は涙を拭った後、こたえた。

「エルです」
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