天空のエトランゼ〜赤の王編〜
一匹が、梨々香に向かって、真っ直ぐに突進してきた。

「梨々香!」

ステラが叫んだ。

「くそ!」

梨々香は銃を撃つが、魔物の固い皮膚は銃弾を跳ね返す。

その時、梨々香の頭上を飛び越えて、乙女ブラックが魔物に向かって、飛び蹴りを喰らわした。

しかし、魔物は突進を止めると、鼻先で蹴りを受け止め、そのまま顎を上げるだけで、乙女ブラックを頭上高く吹っ飛ばした。

突き破られた吹き抜けの天井を突き抜け、乙女ブラックの姿が地上からは見えなくなった。

「お、乙女…ブラック」

梨々香は、銃口を向けながら、魔物と対峙した。

梨々香の身長より、大きく開いた口が、一口でかぶり付こうとする。

「やられるか!」

梨々香が引き金を弾こうとした瞬間、頭上から一筋の流れ星が落ちてきた。

「月影キック!」

「乙女ブラック!」

梨々香の顔が、笑顔になる。

先ほどの攻撃で、蹴りが効かないとわかった乙女ブラックは、魔物の突き上げる力も利用して、頭上高くに飛び上がったのだ。そして、ムーンエナジーを右足に収束させて、直角に落ちてきたのだ。

「やったか?」

梨々香は銃口を向けながら、魔物の様子を見ていた。

しかし、魔物の眉間にヒットした月影キックも…皮膚を貫通できなかった。

少し爪先が、めり込んだだけだった。

「くそ!」

無駄とわかりながらも、銃を撃とうとしたが、梨々香は目を見開いて、引き金にかけた指を止めた。

乙女ブラックが爪先を立てると、回転し出したのだ。

右足に纏う光も、乙女ブラックの全身にまとわりつくかのように、螺旋を描いて回転した。

「ルナティックキック三式!」

ドリルと化した乙女ブラックの体が、魔物の体を貫いた。

「やった!」

そのまま、顎の下から床に着地した乙女ブラックは、絶命した魔物から離れた。

しかし、魔物はもう一匹いた。

乙女ブラックが、顎下から身を屈めて出てきた瞬間を狙って、突進してきたのだ。

大きく口を開けて。




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