天空のエトランゼ〜赤の王編〜
いや、向けれなかった。

2人の間に、理沙が割って入ったのだ。

「そんなに悪いことかしら?」

理沙は、真由の顔を見つめ、

「動物は、沸き上がる欲望を抑えられない。人間だけが、抑えられる。まあ〜全員とは言わないけど…」

微笑みかけた。それから、輝の方を向き、

「後は…勇気を持てば、あなたはきっと…素晴らしい戦士になる」

「え」

輝は、理沙の真剣な目に言葉を失った。

「戦士?」

真由は、嘲るように肩をすくめ、

「馬鹿じゃないの!」

吐き捨てるように言うと、2人から離れた。

「あっ…」

輝の視界から、真由が消えていく。その代わり、緑が視界に入ってきた。

「同感だな。こいつが、戦士になれるとは思えない」

先程の輝の不甲斐なさに、少し怒っていた。

「あわわわ〜」

身の危険を感じ、輝は後退りした。

そんな2人の様子を見ていた理沙の後ろに、高坂が立った。

「綾瀬くん。少し話がある」

「?」

理沙が振り向くと、無言でついてくるように高坂は目で伝えた。

理沙は、素直に後ろについていく。

輝達から、会話が聞こえないところまで来ると、高坂はおもむろに口を開いた。

「単刀直入に訊こう。君は、何者だ?」

足を止め、背中越しに訊いてきた高坂に、綾瀬はフッと笑うと…口を開いた。

「誰にも言わない?」

「約束しょう」

高坂は振り向き、頷いた。

「だけど…教えられるのは、一言だけ…。質問には、答えられないわ」

「…」

高坂は、何か言いたそうになったが、

「了承した」

力強く頷いた。

そんな高坂に近づくと、綾瀬は耳元で囁いた。

「な!」

高坂は目を思い切り見開き、絶句した。

理沙は微笑みながら、高坂から離れると、そのまま背を向けて、みんなの方に歩き出した。

「ま、待って!だったら、どうして!あの夜!」

「質問に答えません」

理沙の背中に、手を伸ばした高坂は…しばらくして、虚しく手を下ろした。
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