天空のエトランゼ〜赤の王編〜
苦悶するような浩也の様子に気付き、隣に座るカレンは言葉をかけようとしたが…言葉が浮かばなかった。

数秒悩んだ後、

「大丈夫か?」

そんな一言しか出なかった。

「う、うん…」

浩也は手を下ろすと、カレンに微笑みながら頷いた。

カレンは、額に汗を浮かべている浩也の様子に、ハンカチを取り出すと、拭いて上げた。

「ご、ごめん」

カレンの行動に戸惑った浩也は、慌てて離れようとしたが…思わず動きを止めた。

カレンの顔が、強張っていたからだ。

(な)

カレンは心の中で、絶句した。

(あ、熱い!?)

浩也の体温は、人間のをこえていた。

(なんだ…この熱さは)

カレンは、ハンカチで拭くのをやめると、浩也の両肩を掴んで訊いた。

「お、お前!体は、大丈夫なのか!」

「な、何が?」

浩也は、カレンの怒ったような剣幕に驚き、じっと目を見つめていた。

カレンはそんな浩也を見て、気付いた。

(先程の奪った魔力が、上手く制御できていない。だけど…)

カレンは、唇を噛み締め、

(本人には、自覚がないし…ダメージもない)

最悪の未来を予測した。

(これから、こいつが戦い…魔物の力を吸収し続けると…こいつの体から、熱が放出される。今は、触れないとわからないが…いずれ、そばにいるだけで…)

カレンははっとした。

(太陽のバンパイア!)

かつて、赤星浩一がそう言われていた。

浩也を掴むカレンの両腕が、小刻みに震えた。

(このままでは…こいつは、太陽になる!第二の太陽に)



そんなカレンの様子に、一番前に座るリンネが笑った。

後ろを見ていないが、手に取るようにわかっていたのだ。

(心配はいらないわ。この子は、太陽にはならない。その前に…封印が解ける!)

リンネは、長い前髪を指先で丸め、

(本来ならば…永遠に解けないはずの封印が…浩也という肉体を作ってしまった為に、解くことが可能になった)

リンネはほくそ笑んだ。

(自分の肉体が、危険になった時…彼は、復活する。なぜならば…彼の魂があれば、魔力の調整は可能!そして!)
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