天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「まあ〜ここからは、大丈夫だろうが…一応、気を抜くなよ」

一番の難所を越えたことで、前田も少しは安心していた。

事実、それ以降の襲撃はなかったのだから。



「いよいよ…獄門島ですね」

隣に座る真由に愛想笑いを向ける輝に、前の座席に座るさやかが訂正した。

「極楽島だ」

「そ、そうだった!アハハハ…」

笑って誤魔化さそうとする輝。だけど、真由は前を向いたまま、口を閉じていた。

(ど、どうして、この席なんだよ!)

とにかく、できれば…席を代わって欲しいと、心の底から願う輝。

そんな輝の気持ちを知ってか…にやりと笑ったさやかは、言葉を続けた。

「と言っても…誰の為の極楽かは、知らないけどね」

「!」

その言葉に、息を飲む輝。

「…」

少ししーんとなる車内に、梨々香の笑い声だけがこだました。

「きゃははは!何言ってんですか!部長!あたし達にとってに決まっているでしょうが!」

そう言うと、梨々香はさやかの隣で銃を取りだし、

「あの島は、修行の場!もしかしたら、あたし1人で、島の魔物を全滅させるかも!きゃははは!」

楽しそうに笑う後輩の姿に、さやかはため息をついた。

バスはいつのまにか…海岸線を走っていた。

右手に広がる青い海。

実世界よりも美しい。

しかし、ブルーワールドの住民はこう言う。

海は美しく、恐ろしい。

なぜならば…あそこは、人間の領域ではないからと。


(人が栄えない方が…この星は汚れない)

梨々香達と同じバス内にいる浩也の頭にふっと…そんな言葉がよぎった。

(だけど…)

浩也は、自分であって自分でないような感覚を味わいながら、頭の中の会話を聞いていた。

(赤の王!)

先程の魔物が、恐怖に震えながら…自分をそう読んだ。

(赤の王って…)

そして…。

(太陽がほしいか?)

自分の口から出た言葉…。

浩也は、手の甲でこめかみを押さえた。

(僕は…一体…)
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