天空のエトランゼ〜赤の王編〜
そして、撃ちながら魔法陣に飛び込んだ。

と同時に、魔法陣は消えた。



「うわああ!」
「きゃああ!」

輝の上に、馬乗りに梨々香が落ちてきた。

どうやら、転送と同時に避けなければならなかったようだ。

「お、重い…」

下敷きになった輝の呟きに、

「誰が、重いって!」

梨々香は股がりながら、輝の後頭部に銃口を向けた。

引き金に指をかけた瞬間、梨々香は静まり返った休憩所内に気付いた。

穴蔵のような空間の奥に、踞りながら震えている男子生徒を発見したからだ。

「先客?」

梨々香は、銃口を下ろした。

「お、お前は!柔道部の畳!」

男子生徒が誰なのかわかった打田が、駆け寄った。

「他のパーティーのメンバーは、どうした?」

彼らは、高坂やさやか達よりも先に、合宿所を出ていた。

打田の問いに、畳は震えながら、答えた。

「あ、悪魔に襲われて…パーティーは…俺以外全滅した。逃げていたら…い、幾多っていうやつが助けてくれて…ここに、押し込まれ…隠れろと…」

「幾多!?それは、幾多流のことか!」

その名前に反応した高坂が、畳に近付いた。

「ああ…多分…そう」

と頷きかけて、畳の動きが止まった。

高坂を見て…いや、正確には、高坂に抱かれた真由を見て…。

(見つけた)

畳の頭に、声が響いた。

次の瞬間、

「うわああ!」

畳は立ち上がり、走り出した。

「畳?」

止めようとした打田を突飛ばし、輝達の後ろの壁に描かれた魔法陣に向かって、飛び込んだ。

「何?」

あまりに突然の行動に、高坂も十六も対応できなかった。


巨木のそばに転送され、地面に飛び出した畳。

しかし、そこも安全ではなかった。

血塗れになった虎に似た魔物がいたのだ。

手負いの魔物は、畳に飛びかかった。

数秒後…畳だったものは、骨一つ残さずに、この世界から消滅した。

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