天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「くそ!」

一瞬対応が遅れた高坂は、唇を噛み締めた。そして、真由を床に寝かせると、魔法陣に向かって走り出した。

「彼を追いかける!みんなは、ここにいてくれ!」

「だけど、部長!」

輝はまだ、梨々香の下敷きになっていた。

「おれも行くぜ!」

十六は日本刀を握り締めた。

「1人で行く!心配するな!」

高坂は、魔法陣に飛び込んだ。

「ぶ、部長!」

下敷きになりながらも、体を回転して、高坂の背中に手を伸ばす輝。

すぐに転送された為、輝は手を床に下ろした。

「…綾瀬さんも…行方不明だし…この合宿…どうなるんだろ」

泣きそうな声を出す輝に、またフリーズした十六がゆっくりと顔を向けると、話し出した。勿論、舞の声で。

「こ、こ、ここは…で、電波が悪いわね。か、彼女な、なら、だ、大丈夫」

「どうしてだよ」

輝は腕立て伏せをして 、顔を上げた。

「そ、それは…」

言葉の途中で、再びフリーズした十六。

数秒後、

「はははは!」

笑い声とともに、再起動した。 両手を広げ、

「どうやらこの中では、あいつの力から解放されるようだな!おれは自由だ!」

歓喜の声を上げた。

「私も、出るぞ!畳が気になる!」

少し考え込んでいた打田は力強く頷くと、魔法陣向かって歩き出した。

「や、やっぱり!」

輝も腕に力を込めると、

「休んで何かいられない!」

梨々香をどかして立ち上がろうとした。

「駄目だな!」

梨々香は銃口に力を込めると、再び輝を床に押し付けた。

「お前はここにいて、高木さんを見ていろ」

そう言うと、梨々香は輝の上から離れ、立ち上がった。

「梨々香!」

「心配するな!」

梨々香は銃を指で回すと、魔法陣に向けて歩き出した。

「すぐに戻る」

打田の後に続いて、梨々香も魔法陣に飛び込んだ。
< 880 / 1,188 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop