天空のエトランゼ〜赤の王編〜
確かに…魔物の中には、昆虫類の能力を身につけているものは多い。

しかし、昆虫と魔物とは決定的な違いがあった。

体内の構造である。

だが…この世界の人間は、知らない。

魔獣因子が目覚めた人間が、魔物へと進化する過程で…体の中が、蛹の状態のようにドロドロになっていることを。


お頭と言われた男は、舌打ちすると、

「生態系がおかしくなっているのか!だとしても、我々の仕事は、人間以外を皆殺しにすることだ。ただ駆除せよ」

伝令に向けて命令を発した。

「は!」

伝令は頭を下げた。

「必要ならば、森を焼け!依頼者が求めているものは、この島の近海の地下資源!この島に価値はない。焼け野原になろうと、島があればいいのだ」

「は!」

伝令は踵を返すと再び、最前線へと戻って行った。

その後ろ姿を見つめながら、お頭と言われた男はほくそ笑んだ。

「楽な仕事よのう」

そして、研ぎ澄まされた小太刀を手にすると、

「ただ…殺せばいいだけとはな」

フンと鼻を鳴らしてから、

「行くぞ」

周りにいた部下に命じた。

「は!」

そして、すべての忍者が風の如く…森の中に突入した。




「何が起こっているの?」

井田百合花は、ざわめく木々の音にびくっと身を震わした。

五つあったパーティーの内、残っているのは、高坂のパーティーとさやかのパーティーを除けば、百合花のパーティーを残すだけになっていた。

彼女のパーティーは、知能派が多く…戦うことよりも逃げることを選択した。

「どこぞの馬鹿が、暴れているのだろうよ」

サッカー部の刈谷雄大は、鼻で笑った。

「今回のミッションは、いかに最後まで無事に過ごすかだ」

そう言った刈谷の周りの4人の生徒も、頷いた。

「そうですよね」

百合花も頷いた。

「なぜならば〜我々は、平和主義者だからだ」

刈谷は、かけていた眼鏡を人差し指で上げると、フッと笑った。



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