天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「伏せて!」

九鬼の言葉にはっとして、身を屈める2人。

体の至るところが切れたが、致命傷にはなっていない。

「中に行って下さい!何とかします」

低空で、地をかける九鬼は魔法陣から飛び出した。

「生徒会長!」

「あ、あれは!?」

完成した魔法陣によって転送される寸前、顔を上げた高坂の目に木々を薙ぎ倒し迫る真由の姿が映る。

「高木君!」

「本性を見せたようね」

冷や汗を流しながらも、さやかが言った。

「装着!」

乙女ブラックとなった九鬼は神速の動きで、真由の前まで移動した。そして、再び風を発生させる前に、蹴りを放った。

「ルナティックキック零式!」

しかし、それを真由は指先一つで止めた。

「何!?」

絶句する九鬼を見ずに、

「邪魔だ!」

指先で払うと、魔法陣の中にいる高坂とさやかを睨んだ。

「フン!」

もう片方の手で風を起こすと、竜巻が発生した。

しかし、その前に、2人の姿は消えた。

「高木さん!」

いつのまにか真由の後ろを取った九鬼は、腕を回すと、そのまま腰を曲げて、ジャーマンスープレックスの体勢に持っていった。

しかし、地面に真由の脳天が突き刺さることはなかった。

風が下から沸き起こり、2人を空中に浮かべると回転し、九鬼を吹き飛ばした。

「うわああっ!」

乙女スーツが傷だらけになり、空中から地面に激突した九鬼を、上空から見下ろす真由。

「雑魚が…」

そして、一気に落下すると、九鬼の鳩尾に膝を叩き込んだ。

「ぐわあ!」

九鬼は血を吐き、膝が突き刺さっている部分からヒビが走ると、乙女スーツは砕け散った。

「無力な人間が」

真由は冷たい瞳で、見下ろしながら、九鬼に止めをさそうとした。

「高木さん!」

その時、真由が薙ぎ倒した木々の向かうから、輝達が姿を見せた。

「生徒会長!」

打田は、下敷きにされている九鬼に気付いた。

「真弓を倒すのは、おれだ!」

二本の刀を握り締めた十六が走り出した。
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