天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「に、人間が!」

真由が、腕を十六に向けた。

「やめてくれ!高木さん!」

輝の叫びを聞いて、ほんの数秒だけ…真由の動きが止まった。

その動揺を見逃さないものがいた。

「少しは、人間の心が残っているのかしら?」

耳元で声がして、振り返った真由の目に、微笑む綾瀬理沙が映った。

「き、貴様!」
「遅い!」

慌てて振り向いた真由の胸に、手を当てた理沙は、そこから光の塊を放った。

「うぎゃあ!」

先程痛んだ胸の傷痕を直撃し、そのまま真由をふっ飛ばすと、理沙は眉を寄せながら力を込め、さらにジャングルの向こうに移動させた。

「戦う場所を変えるわよ。真弓」

理沙は、真弓が飛んでいった方を見つめながら、九鬼に言った。

「綾瀬さん…あなたは?」

立ち上がった九鬼に、理沙は微笑むと、

「話は後で」

どこからかプラチナに輝く乙女ケースが飛んできた。

「装着!」

乙女ケースが開き、理沙の体を光が包んだ。

「ま、まさか!?」

絶句する九鬼の目の前に、乙女プラチナが光臨した。

「先に行くわよ!真弓!」

乙女プラチナの姿が消えた。神速で、真由を追ったのだ。

「く!」

九鬼は落ちている乙女ケースを拾うと、前に突きだした。

「装着!」

乙女ブラックに変わると、輝達に告げた。

「高坂部長と、如月部長は結界の中です!あなた達は、避難して下さい」

「そんなことより、おれと戦え!」

十六の日本刀が斬り裂く前に、九鬼の姿が消えた。

理沙の後を追ったのだ。

「くそ!」

空振りした十六の日本刀は、地面を斬った。

「ど、どうなっているんだ?」

事態が把握できない…輝と打田。

十六を操作できる舞は、恐らく部室で寝ているのだろう。

「部長…」

輝は、異様な雰囲気を漂わす十字架の墓標を見つめた。

恐らく…その辺りに、高坂達がいるのだろうが…中に入り方がわからなかった。

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