先生の青




  ガチャ……



車のドアが開く音で目が覚める



先生が助手席のドアを開き
私のシートベルトを外して
抱き上げようとしたから



「……先生」


「お?起こしたか?
寝てていいぞ
部屋まで抱っこしてやるから」



外を見ると
先生のマンションの駐車場で


「いいよ、起きたし
自分で歩ける……」


そう言った私を無視して
先生は「よいせ」って
お姫さま抱っこをして
足で車のドアを閉めた



「……ちょ、ちょっと!
おろしてよっ、先生!」



なんで起きてるのに抱っこ?
やだ、やだ 恥ずかしいっ



足をバタバタさせ
「おろしてよっ」って
抵抗する私を笑って



「部屋に着いたら
おろしてやるよ」



エントランス、
エレベーターの中
通路で誰ともすれ違わない事を祈りながらも



ふわふわする感覚や
ななめ下から見つめた
先生の顔にドキドキした





当たり前のように
先生の部屋に帰り


先生は私にもう
「泊まってく?」
なんて訊かない



「シャワー先に使うか?」


Tシャツとハーフパンツを
私に差し出して



「イチ、今度さ
パジャマとか着替え
ここに置いとけよ」


先生は軽い口調で
私に言ったけど


その言葉の中には
少し焦りの色が見えた



私は曖昧にうなずいて
着替えを借りて
シャワーに入った



先生が好きだ
だけど どうして?


私が先生の部屋に
着替えを置く事はないって
妙にはっきり思った




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