先生の青
Color.10 痛みを抱きしめて




「市花ー!生物持ってない?」



学校の休み時間
絆と喋ってると
笹森くんが来た。



「あるよ」


机の中から
生物の教科書を出して渡す



「サンキュ」


笹森くんは教科書を受け取り
自分の教室に帰るかと思ったら
そのまま私の隣の席に座った



特に何を言うでもなく
生物の教科書を
パラパラ捲る笹森くんを
絆はチラリと見てから



「あー、そういえば私、
朝ちゃんに用があったんだ」


なんだかわざとらしく言って
クラスの女子の朝ちゃんの元へと絆はそそくさと行ってしまった。



………いらない気を遣いって
まあ、そこが
絆の可愛いところか?



「なあ」


笹森くんが口を開いたから
「ん?」と聞き返す



「市花、お前いつ暇なの?」


ぱたん!
生物の教科書を閉じて
笹森くんは私を
真っ直ぐ見つめた



「どっか行こうよ、二人で」


「あー……」


耳に髪をかけながら
頭を駆け巡るのは
うまい かわし方



「バイトあるし」


「毎日じゃねーだろ?」


「笹森くんだって陸上」


「1日くらいサボるよ?」


うーん。なかなか手強いな


困っているとチャイムが鳴って
助かったなんて思うと


「日曜日、バイトは?」


椅子から立ち上がり
笹森くんは急かすように訊いた


「5時から……」


「んじゃ、それまで 会えるよな?」


「え?」


言い返す間もなく
笹森くんは「約束」って言って
教室を出て行った




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