先生の青




「木下……?」



身体が少し震えた



先生は傷を抜かせば
いつもと変わらない
くっきり二重の少しタレ目
悩みなんてなさそうな顔を
私に向ける




「………先生」


私が震えた声を出すと
ふっ……と先生の頬が強ばる



悩みなんてなさそうな普通を
先生も守ってるのかな?



………私と同じように




ギュッと唇を噛んでから



「先生、私、一ノ瀬だって
何回 言えば覚えるの?」



いつもの調子で私が言うと
先生は表情を和らげ


「ああ………本当だ。
ごめんな…………」



よくは わからない


だけど 先生


あなたの中に ある


私と同じ物が絶対に


今は 今は 触れずに そっと



「三島先生って
物覚え悪いよね」


「なにぃ?先生に向かって
お前、美術の評価1にするぞ」



触れずに そっと



まだ隠しておこう



今は まだ


触れずに そっと



私たちは まだ
そんなに強くないから



三島先生


私が こんなにも
安心するのは



互いに癒えぬ傷を



抱いているからなのかな







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