先生の青




先生は何も答えない



「無茶して…………
もしもの事があったら」


私が言うと
ふんって鼻で笑い


「もしもの事って」

先生がバカにしたような
口調だったから


ムッときて


「わからないよ!
今日だって下手すりゃ
死んでたかも」



「あのなぁ……」


先生は 寝返りをうち
うんざりした顔を
こちらに向けた



「死んでたかもってお前
そんな簡単に死ねるなら
苦労しねぇよ…………」



―――――――――え?



目を見開いた私を見て
先生も ハッと表情を固くする


明らかに失言したって表情だ



「………先生」


   簡単に死ねるなら
   苦労しねぇよ



先生、それじゃあ まるで





「木下」


先生は無理やり話題を変えた


「そうだよ、木下
お前、悩みがあったんだよな
ほら、言ってみ?」



この人


この人、怖くないんだ


わからないけど


まだ、はっきり わからないけど



三島先生は怖くないんだ



自分の身体がどうなっても


自分がどうなっても
怖くないんだ




―――簡単に死ねるなら



それって



死にたいって こと でしょう?





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