アンチバリアフリー
おれはちょうどよく買い溜めしてあった紙コップに、麦茶をそそいで机の上に二つ並べた。
早紀はあれだけの雨が降っていたというのに、意外にもたいしてぬれてはいなかった。
それでも一応無造作に置いてあった洗濯物の中から比較的きれいなタオルを選んで渡してやった。
家賃の安さを考えれば広すぎると言ってもよいぐらいの12畳の部屋の中で机を挟んで向かい合った二人は、初めのうちこそ互いに知らない3年間の距離を、100Mを全力で突っ走るようにいっきにつめていった。
だけど、話が終盤に差し掛かったあたりで互いに触れてはいけない部分に近づくのを恐れるあまり次第に会話の間が長くなって最後にはほとんど沈黙が続くようになっていた。
本心を打ち明ければ早紀に心のうちを全て語ってしまって、あまりに弱々しいおれを、ダメな弟を半分あきれながらなぐさめる姉のように優しく受け入れてほしかった。
だけどさきほど部屋の前で感じた早紀への疑いが心のうちをさらけだすことを断固として許さなかった。
< 20 / 20 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop