アンチバリアフリー
思う
ピピピピピ、ピピピピピ、、、♪
着メロがうるさくて起こされるたびにマナーモードにしていなかったことを後悔して、めんどくさがりな自分に嫌気がさす。
目は開けないで音だけをたよりに適当に手を伸ばすがいっこうに見つかる気配はなかった。
ようやく、どうしたらそこに移動してしまうのかはわからないが、枕の下にあった携帯を手に取った時には、ディスプレイに「不在着信5件」という無感情な文字が刻まれていた。

「もしもし、ごめん寝てた」

精一杯のさわやかなセリフで電話にでてはみたが、そんな”にわかじこみのさわやかさ”が通用する相手ではない。

「自分の彼女ほったらかしにしたまま飲みに行っといて、それで電話にもでないってどういうつもりよ!あと5分でそっち着くんだからね、家に女連れ込んでるんだったら早く帰しなさいよ!」

「はいはい、了解です」

寂しかったの、ぐらい素直に言えばいいのに。
早紀からの電話はいつもこんなかんじだ。
会えない日は電話でもいいから話したい、と言い出したのはむこうの方だったくせに、恥ずかしいのか緊張するのかはわからないが、電話での会話のうち始めの5分間は必ずと言っていいほど彼女の激しい口調をなだめるのに費やされる。
付き合いはじめて4年もたった今ではそれはもう二人の間でのかわいらしい習慣の一つになっていた。
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