till to the last
夫からそんな仕打ちを受けた母なる女は、

中絶する時期を逸し、

多分、

無情にも日々大きくなっていくお腹を、
憎んでいたことだろう。


そして、

トカゲの尻尾切りなのか、
赤ん坊嫌いか、

夫への腹いせを私で果たしたのか?、

それとも、
私個人に対する憎しみか、

とにかく、


出産後四日目の早朝、
産院の病室から消えた。
退院時用に用意したサマーワンピースと、
50万近い出産費とともに。

生後四日間、
三時間おきで母乳を飲ませてもらった私は、
新生児室のベビーコットの中で、惰眠をむさぼっていた。

次の三時間後には、
泣こうが、
喚こうが、
あの薄甘い味のオッパイを口に出来ることは、
もう二度とない、
などとは知りもせず…。
< 2 / 2 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

綾さんの恋日和

総文字数/2,855

その他6ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
ねぇ、綾さん。 孫娘が高校中退したって、どう思う?。 怒る?、気にしない?、 それとも、悲しい?。 ねぇ、綾さん。 私が産まれる遥か昔に死んだ爺ちゃんのこと、愛していた?、蔑んでいた?、憎んでいた?、それとも何も感じていなかった?。 ねぇ、綾さん。 女に産まれて良かった?。自分が産んだ四男二女のことを、憎んだり恨んだりしていないの?。 ねぇ…。 ねぇ…。 ねぇ…。 訊きたいことも、話して欲しいことも、聞いて欲しい私の愚かとか、たくさんあるのに、今となっては、会話は一方通行なんだね、綾さん。 散り始めた桜と葉桜のコントラストが、こんなにも穏やかで、儚くて、暖かな陽だまりの、その真ん中であなたは微笑んでいるというのに・・・。
オアシス

総文字数/1,126

青春・友情2ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
腐るというのは、物質的なものばかりではない。 一つの腐った心。 一つの悪意。 それらはあっという間に、無自覚的に、蔓延していく。 一つが二つに…四つに…八つ…十六へ…。 一つを始点に、放射的に、取り巻くもの、全てへ。 小さな町。小さな学校。 小さな家庭。 逃げよう!。どこへ?。 どこでも良い、 ここではない、どこかへ。 瀕死の心では、 濁った水さえも、時には救いのように見えるだろう。 やがて、濁ったオアシスのような世界の底で、私は束の間の安息を貪る。 ただ、自分の心を守るために。 私は、誰かの、温かく差し伸べられた手を、待っているのだろうか?
12年

総文字数/1

恋愛(その他)1ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
まるでアナタの 附属品であるかのように 保の妻と呼ばれて 12年 私はいつ貴方を愛し いつから 愛せなくなったのだろう 夫と妻、と言う契約を 私は破棄したい

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop