風の旅
ベッドに座って瑞姫を後ろから抱いて、瑞姫は俺にもたれかかってノートにゆっくり書き連ねた。

ゆっくりとたまっていく文字の羅列は、整い、落ち着いているがゆえに、どこか怖かった。

内容がまた、すごい壮絶なものだし。

ここまでで1回書くことをやめて、瑞姫は少し思案した後に、俺に抱きついてきた。

「・・・?どした?」

不安げにこっちを見上げてきて、さっきとは違った整っていてもあせったような字で、

『お願い、私を追い出さないで、どこにも行かないで。』

書いたそれを俺に押しつけて、震えながら再びしがみついてきた。

あせったような文字は、なんだかとても人間味にあふれて見えた。

ほっとしたのと同時に、一種腹正しいような気持ちになる。

瑞姫の過去を知ったら、俺が瑞姫の事を捨てるとでも思ってるの、こいつ。

俺のことを必要としてくれるのは嬉しいけど。

少し強引に瑞姫を引き剥がして伝える。

「俺は瑞姫のこと、信じてるよ。愛してるよ。だから、瑞姫だって俺のこと信じてよ。」

なんだか、俺の気持ちを疑われているようで、少しむっとする。

絶対、瑞姫より俺の方が想う気持ちは強いつもりなのに。

瑞姫は、ぱあっと明るくなって俺の首筋にキスしてきた。

これは瑞姫の簡単な合図。

『梗丙、好き』

ノートに合図の意味を書いてから、続きを書き始めた。






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