短編集
プライド



「行くな」
「もっと、今までよりずっと大切にする」
「本当に好きなんだ、だから、行くなっ、っ、」




「、、別れよう?もう、疲れたよ。ばいばい」

視線を合わせることなく告げられた言葉に、そう、言えたら良かったのに。


結局、何一つ口から出てきやしなかった。

その代わりに口から出たのは、

「あっそ、じゃあな」

馬鹿みたいに強がった言葉。



コトリ。

置かれたのは、記念日に渡した安物の指輪。

「気が向いたから、やる。安物だけどな」

そんな言い方しか出来なかった馬鹿な俺。
なのに、お前が泣き出すから、俺までなんだか泣きそうになったんだ。

それから毎日その指輪をしてじっと眺めては幸せそうにしてたお前。

だけど、その指輪を今置いて行くんだな。

俺の、無駄にデカくてくだらないプライドを捨ててこのどうしようもない想いを伝えたら、何かが変わるんだろうか。

そんな事を考えていた間にしまった扉。

後に残されたのは主のいなくなった冷えたソレに、恐いくらいの静寂。

それとは反対に煩い悲鳴をあげる俺の心臓。



゙プライド゙
(嗚呼、本当にくだらない)




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