【短編】鐘の音が聞こえる
記憶が蘇っている…?



「あの後、何度か一緒に遊んだけど、ケンは確か… 突然公園には来なくなった」



「いや、行ったんだよ。そして、また奈緒に出会った。」



「え…?」



「出会ったじゃないか。…って言ってもその10年後、だけどね。」



「10年後…」



ケンは…



「ケンは小学生だった頃の、俺のあだ名だ。」



彼はハッキリとした口調でそう言ったのだった。



その時、頭の中で引っかかっていたものがすべて外れたような気がした。


そして、ものすごい勢いで、埋もれていた記憶の渦が走馬灯のように頭の中を駆け巡っている…



「あ… 健(たける)…!!」



健は私の目を見つめた。



「あれから10年後、この公園で君と出会った。俺はネコに引っ掻かれて、ベンチに座ってたら、消毒してくれただろ、奈緒が」



『ネコに引っかかれたらすぐに消毒しないと、感染症を起こすから…』



『…いつも持ち歩いてるの、そんなもの…?』



『うん。私もネコに引っ掻かれたことがあって。それ以来、ポーチに救急セットを持ち歩いてるの。』





「ひと目で分かった。10年前の『また明日ね』っていう約束守れなかったの、ずっと気にしてたから」



健は小さく笑った。



「…全然気付かなかった」



私は俯いた。



「あの時出会えて、本当によかったって、思ってる。もちろん、今も…」





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