キミの隣に
「なんか、こうしてるとさぁ。

もうすぐ、あっちに帰るなんて
思えないな。」

ちょっと淋しそうな
表情を浮かべて樹里は言う。


「そうだねぇ。」

そうなんだ。


ほんの数日前まで、
一人で帰省を過ごすって、
頭でいたっていうのに。

樹里と再会するなんて
全く計算にもなくて

会えないどころか
この先だって、
ずっと一人だと思ってた。


それが、思わぬ展開で
入籍するだなんて。

この先の人生、ずっと、
隣に居てくれるんだって
思った瞬間
離れるのが悲しいなんて。

私って、
現金だよねぇ・・・

元々ドライで
薄情?で、飽きっぽいって事は
自分でも、薄々
自覚してたけど。


あんな旅立ち方したのに
この人は・・・

ずっと、ひっかかって
気にかけていてくれたんだね。

大事にしなくちゃ
いけないね。


「あのさあ・・・」

樹里が言いにくそうに
こちらに視線を落とす。

「なあに?」

「俺さあ、ギター弾きだからさ
指輪できないんだ。」

「ああ、ネックとかに
あたるもんね。

ギターがキズつくから
しないって
うちのギターさんも
ゆってるよ。」

 

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