いちばんの星
妖しく微笑むリヴィアに、ザランは続けた。
「王家の血筋に使用人の血筋が混ざるなど許される事ではない。私が何を言いたいか…おわかりかな?」
顔の前で組まれた手越しにリヴィアを見つめるザランの瞳…
「…お任せください」
そんなザランにそう答えるとリヴィアは立ち上がり扉へと向かった。
「私が…ヴェルヌ様の目を覚まさせてみせましょう…」
まるで舞台の上にいる踊り子のようにザランにむかってお辞儀をするとリヴィアは部屋を後にした。
「あの踊り子も気に食わんが…使用人よりは幾分かましか…」
そう言うとザランは立ち上がりどっさりと書類に覆われた机に腰掛け今日の公務を開始した。
「早く妃を見つけねば…」
―――――
同じ頃。ヴェルヌも山のような書類に黙々とサインをしていた。
「しかし…本当にうまくいってよかった。さんざん迷惑かけてくれたからな」
ソファーに腰掛けながらヴェルヌに向かってそう言うスティークの顔は、その言葉とは裏腹にとても嬉しそうだ。
「だからその点はさっきから何度も礼を言ってるだろ。そういうお前だって国王の顔を思い切りぶん殴りやがって…」
そう言ってじろりとスティークを睨みつけるヴェルヌに、スティークは「悪かったって」と顔の前で手を合わせてみせた。
ヴェルヌがエミリア達に下した罰は少しの謹慎のみ。
エミリア達が城を一旦離れる時に、「二度とこんなことがないように」とわざとニッコリ微笑んだヴェルヌに、スティークはミュリエルへのいじめはもう大丈夫だと感じていた。