いちばんの星


ヴェルヌは立ち上がりドアを開けた。



「行け…」



ミュリエルに背中を向け冷たく言い放つヴェルヌの声を聞き、ミュリエルの目から再び大粒の涙がこぼれ落ちた。



「早く行けッ!!!」



ヴェルヌの言葉に、ミュリエルは力なく立ち上がると駆け足で部屋を出た。



大切な人なのに…



「うっ…」



しばらく走ると、ミュリエルは真っ暗な廊下の端に座り込んだ。



「ヴェルヌ…さまっ…」



愛しているから…



部屋に残ったヴェルヌはワインの瓶を取りそれを飲み干すと、壁に向かって思い切り投げつけた。



「くそッ!!!」



愛していたのに…



愛しているから別れを選んだミュリエルと、愛しているから引き留めることができなかったヴェルヌ…



一度絡み合った運命の糸は、再びゆるみ始めてしまった…
< 81 / 126 >

この作品をシェア

pagetop