いちばんの星


ミュリエルが部屋へ戻った頃にはもう夜が明け始めていた。



スヤスヤと眠るラナの顔を見ると、ミュリエルは再び泣き出した。



「ラナ…ごめんっ…」



部屋にあった荷物をまとめると、ミュリエルはラナ宛てにメモを書き残した。



何も言わず出て行く事を許してほしいという事と、ラナとスティークに…ありがとう、と…



「ラナ…ありがとう」



ミュリエルはそっと部屋を出ると、そのままエルトの部屋へ向かった。



エルトはすでに起きており、ミュリエルの話を黙って聞いていた。



「お世話になりました」とミュリエルが頭を下げると、エルトはギュッとミュリエルを抱きしめた。


「ミュリエル…」

「…ありがとう、ございました」



ミュリエルの意志は固いと感じたエルトは何も言わずミュリエルを見送った。



城の外はすでに明るく太陽の光がミュリエルを照らした。



城を振り返り、優しく微笑んだミュリエル。



「さようなら…」



その声は、誰の耳にも聞こえることはなかった…
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