奉公〜咆哮1番外編〜
 今回の訪日に於いて王子に降り掛かる危険度について言及してみよう。

ラマネリ王国はスイスやオーストリアと同じ永世中立国の立場を取っており、政治的・宗教的に対立する国は皆無と言っていい。

それにあくまでお忍びの日本行脚だ、ましてや直接国政に関与してもいない子供をわざわざ狙う輩が居るとは思えないが、万が一という事も有る。

念を入れるのに越したことはない。

言うなれば俺達は、その起ころう筈も無い不測の事態に備えての布石みたいな物で、事が起こらないように注意しながら王子の接待役も兼ねなければいけない、微妙なポジションなのだ。

「さぁ王子、こちらへどうぞ」

 アーケードの入り口を入るとありきたりの駅前商店街が続いている。しかし都内の、著名なコンサート会場も有る駅の商店街だけあってなかなか立派な作りではある。

奥へ歩いていくと右側に天井がいきなり低くなる場所に出る。元々有った古いマーケットのビルを、新設されたアーケードが包み込むようにして出来ている場所。

地震が来たら崩れてしまうのではないかと思う程に老朽化しているここの上階に、コアなフィギュアや単行本が売っている店、コスプレファッションや同人誌の専門店や食堂等、種々雑多な店舗が軒を連ねている。

「ここ、ここ! 来たかったンだよなぁ」

 日本と関わりの深いラマネリ王国だ。王子も来訪する度に名所旧跡巡りでは飽きてしまうだろう。気持ちは解らないでもない。

「一種独特の雰囲気よね」

「客層もバラバラっすね」

 すると王子はフィギュア・ジオラマ専門店に入って行く。

「こんなレアなフィギュア、ネットオークションでもお目に掛かれんぞ!」

目当ての物でも有ったのか、相当はしゃいでいるようだ。

全員で店内に入ると満員になってしまうので、玉ねぎ部隊と俺は外で待機することにした。


< 14 / 36 >

この作品をシェア

pagetop