香る紅
織葉が倒れた時、「強引にでもやっぱり休ませればよかった」なんて、しても意味ない後悔しながら黒板から走った。
「織葉!やだ、しっかりして!」
そう言っても、織葉は目をうっすらあけているだけで、反応を返してくれない。
気づけば実紘も隣に来てたから、「保健室につれてって!」と叫んだ時だった。
もともとざわついていた教室が、もっとうるさくなった。
そして勝手に、倒れていた織葉が浮いた。
「え・・・?」
見上げると、今一番憎たらしい奴が、ものすごく心配そうな顔して、ものすごく大切そうに織葉を抱き上げていた。
「先生、貧血を起こしてるので、このまま連れて帰ります。」
教室はその言葉でなぜか一気に静かになった。
相手に言うことを聞かせる貫禄みたいなものが、憎たらしいそいつ―――緋凰にはあって。
教室も、先生までが黙らされた。
先生は「わかった。気をつけて。」それだけ必死に言った。
「実紘、祈咲、俺と織葉の荷物持ってきて。迎え来るまで保健室にいるから。」
「わかった。」
実紘はあーあ結局こうなるんだな、とでも言いたげに荷物を準備していた。
私はというと、返事なんかしてやりたくなくて、無視して準備を始めた。
だって、悔しいじゃない。
そのとき一番憎たらしい奴の言葉に、黙らされてしまったなんて。
その後緋凰は先生を一回睨んだあと、保健室へと、教室を出て行った。
*
「織葉!やだ、しっかりして!」
そう言っても、織葉は目をうっすらあけているだけで、反応を返してくれない。
気づけば実紘も隣に来てたから、「保健室につれてって!」と叫んだ時だった。
もともとざわついていた教室が、もっとうるさくなった。
そして勝手に、倒れていた織葉が浮いた。
「え・・・?」
見上げると、今一番憎たらしい奴が、ものすごく心配そうな顔して、ものすごく大切そうに織葉を抱き上げていた。
「先生、貧血を起こしてるので、このまま連れて帰ります。」
教室はその言葉でなぜか一気に静かになった。
相手に言うことを聞かせる貫禄みたいなものが、憎たらしいそいつ―――緋凰にはあって。
教室も、先生までが黙らされた。
先生は「わかった。気をつけて。」それだけ必死に言った。
「実紘、祈咲、俺と織葉の荷物持ってきて。迎え来るまで保健室にいるから。」
「わかった。」
実紘はあーあ結局こうなるんだな、とでも言いたげに荷物を準備していた。
私はというと、返事なんかしてやりたくなくて、無視して準備を始めた。
だって、悔しいじゃない。
そのとき一番憎たらしい奴の言葉に、黙らされてしまったなんて。
その後緋凰は先生を一回睨んだあと、保健室へと、教室を出て行った。
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