いつでも逃げられる
と。

「そのままじゃ寒いでしょ?」

私の身にのしかかっていた重みが消え、代わりに何かが覆い被さってくる感触。

柔らかくて、温かくて、心地いい…。

毛布のようだった。

「まだ加奈子ちゃんが逃げ出す可能性があるから、目隠しも手錠も取ってあげられない。口を封じているガムテープもね…でもお腹が空いたら声を出して。食べるものはいっぱい買い込んできてるからさ」

少し離れた場所から、男が話しかけてくる。

…邪な理由で私を脱がせた訳じゃない。

その事のアピールだろうか。

何にせよ、男は私の体にそれ以上触れようとはしなかった。




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