いつでも逃げられる
静かに、優しく。

男が私の口に貼ったガムテープを剥がす。

あくまでその手つきは丁寧。

痛みを感じさせないように、慎重且つ繊細にテープを剥がす。

完全にテープが剥がされた所で。

「誰かぁあぁあぁぁぁぁっっ!!」

一か八か、声を限りに私は叫んだ!

「誰か助けて!私拉致されています!ストーカー男に監禁されています!助けて下さい!このままじゃ私犯されて殺されてしまいますっ!助けてっ!助けてぇぇぇぇぇぇっ!」

腹から声を振り絞り、息の続く限り、呼吸が乱れるほど叫ぶ。

「……」

そんな光景を、男は黙認しているようだった。

口を塞ぐでもなく、私を引っぱたくでもなく、怒鳴って暴力を振るうでもなく。

ただ、いいように叫ばせていた。


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