いつでも逃げられる
「!!!!!!!」

そんな思考がブッツリと中断してしまうほど唐突且つ突然に。

私は口を塞がれた。

手によるものじゃない。

口元に感じる粘着感。

独特の匂い。

覚えがある。

この匂いはガムテープだった。

テープを剥がそうと口元に両手を近づけると、その手を掴まれ、後ろに回された。

ジタバタと抵抗する。

…くっ、と。

背後から苦しげな声が聞こえた。

歯の隙間からこぼれるような激しい呼吸。

カサカサして、節くれだった指の感触。

汗臭い体臭。

振り向いて顔を見た訳でもないのに、背後にいるのが男だと容易に想像できた。

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