いつでも逃げられる
その日の昼食が終わる頃。

「加奈子ちゃんは可愛いね」

少し距離を置いた場所に座って、男が呟く。

…また始まった。

私は顔を背けたまま黙っている。

四六時中、彼と顔を付き合わせた…といっても目隠しされているから私は顔を知らない…生活。

彼は事あるごとに、こうして私を誉めた。

肌が綺麗だね。

顔が可愛いね。

スタイルがいいね。

足が細いね。

私とまともな会話をした事がないから、外見を誉めるしかないのだろう。

私は外見でしか女の子を判断できない男は嫌いなのだけど。

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