いつでも逃げられる

思えば私は、話をまともに聞いてくれる相手がいなかった。

鬱憤を晴らせる相手がいなかった。

だからこんな、自分を監禁したストーカー男なんかに身の上をベラベラ話してしまったのかもしれない。

「っていうか…どうせ殆ど知ってるんでしょ…私の事根掘り葉掘り調べ上げてるストーカーなんだから」

皮肉混じりに言ってやる。

「確かに…知ってるよ」

男は苦笑いする。

「でも、僕がこっそり調べるのと、加奈子ちゃんが自分から話してくれるのとじゃ全然違う。たくさん話してくれて嬉しいよ」

「…ふん」

私は顔を背け、鼻を鳴らした。

…それが数日前の事だ。