【長編】距離
「朱菜、ごはんよ。」


「ほえ?」


私は、考え事しながら、寝ていたみたいだ。


なんとも間抜けな声。


「朱菜、泣いたの?」


お母さんが私の涙を拭った。


夢を見ていた。


私が気づかなきゃいけないこと。


それだけは、わかる。


それは、この涙が証拠。


「わかんない。
なんか、悲しい夢を見てた気がする。
忘れちゃったけどね。」


お母さんに心配かけないように笑った。


「そう?
それならいいわ。
顔洗ってから来なさい。
お父さんが面倒くさいから。」


お母さんは、苦笑い。


お母さんの言いたいことは、よくわかる。


お父さん、うるさいのよね。


私を溺愛してますから。


私が泣いてたら、誰が泣かしたんだって。


けど、ありがたかったりする時もある。


どうしようもない時も救われたように感じるんだ。


「うん。
すぐ行くね?」
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