*ハナコイ*


「わたしッ…」



何か言いたげな彼女。



「私…ロゼアと言います。使用人として働いています」



使用人なのか…



「そっか」と言いながら近くのベンチに座った。



名乗ってもらったんだから名乗るのが礼儀だよな…



「俺はセルジュ。よろしくロゼア」



そう言ってにっこり笑ってみせた。



とりあえず笑っておけばいいだろ。



その程度の気持ちだったのに…そんな俺の顔を見て微笑むロゼア。



なんだか恥ずかしくなってロゼアの隣にしゃがみこんで目の前のバラにそっと触れた。



「俺ね、ここに咲くバラが大好きなんだ…すごく綺麗だ…」



何でこんな事初めて会った使用人に言うんだろ。


「ここに来てバラを見てるとすごく心が暖かくなるんだ」



無意識だったけど…



今度は心からの笑顔を彼女に向けていた。



"王子"の笑顔ではなく,"セルジュ"の笑顔を…
< 10 / 58 >

この作品をシェア

pagetop