そして秘密の時間(とき)を共に
僚二が夏の海で行方不明になってから、私は毎年夏が来るのが嫌だった。

あの日の事を思い出すから。

ほんの数時間前まで私の目の前にあった笑顔が、なんの予告もなく消え去ったあの日。



『なんで私だけが助かったの?』

『私は僚二の分も頑張らなくちゃいけない』



そうやって、いつの間にか自分を責めて追い込んでいた事を、涼に諭されるまで気が付かなかった。

この温もりに出会わなかったら、今頃、私はどうなっていたんだろう?

もしかしたら、僚二が私を心配して、涼に出会わせてくれたのかもしれない……時々、そう思ったりする。


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