ことばにできない
ゆっくり、ゆっくりでいいよ。
急がないで。


時々、そう声を掛けながら、私は少女に寄り添って、待合室の壁沿いに進んだ。

待合室のベンチには、若い女性が何人も座っている。


ご主人や母親が付き添っている人、

臨月近い大きなおなかを抱えた人、

小さな子供を連れている人…



…みんな、今の私と同じしあわせに包まれている人たちだ。



私にはわかる。

今の彼女には、この空間はつらい。


大丈夫。

ここを抜けたら、良い場所があるから。


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