危険な彼女
「き、嫌いじゃねぇよ…」




やっとの思いで口を開く。



だが、酔っ払った桜は奈津に休む暇を与えてはくれなかった。




「じゃあ…しゅき?」



「そ、それは………」




そんなこと、答えられるはずがなかった。



亜紀にさえ、まともな返事をしていないのだ。



それなのに、桜に、好き?、だなんて聞かれたところで答えは出ない。



それより、答えること自体、してはいけないことだ。



亜紀への、最大の裏切りになってしまう。




「やっぱりきらいなんだ…」



「き、嫌いじゃねえって!!!

俺は………!」




――………俺は?




そう言った瞬間、体中の感覚が無くなった気がした。



思考回路が全て焼き切られた、そんな気もした。




「あたしはね………しゅき。

なちゅのことだいしゅき」
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