危険な彼女
「ちょっ…亜紀………」



「私はなっちゃんが好き。

桜ちゃんもなっちゃんが好き。


………なっちゃんの気持ちを知りたいんだ」




奈津は、それ以上言葉を発することができなくなった。



亜紀の笑顔がどこか儚くて、胸が痛くなった。




「なっちゃん………」



「……………」



「私………待ってるからね」




そう言い残し、亜紀は自分の家に向かって歩き始めた。



その後ろ姿は、やはり自分の知っている幼なじみの、いつもの亜紀で、

つい、さっきの言葉が本当に亜紀から発せられたのか分からなくなってしまった。




その背中が、一瞬桜にダブる。




思わず腕をあげていた。



そして、桜のときと同じように、その姿をつかむことはできなかった。
< 449 / 491 >

この作品をシェア

pagetop