危険な彼女
〜亜紀side〜




亜紀は、奈津の姿が見えなくなったのを確認すると、膝から崩れ落ちた。



全身に力が入らず、今まで味わったことのない虚脱感が襲っていた。




「振られ…ちゃった………」




そうつぶやくと同時に、目頭に熱いものこみ上げてきた。



しかし、それを流すまいと、亜紀は唇を噛んだ。




強くなる。


奈津に手を引いてもらわなくてもいいように…


もう、びくびくおどおどしないように………





だから、ここで泣くわけにはいかなかった。




「………我慢はよくないと思うけどなぁ」




突然かけられた声に、亜紀はハッと顔を上げた。



そこには、見知った顔。



彩芽の姿があった。




「ど、どうして………?」



「奈津に頼まれてね。

亜紀のことを頼む、ってお願いされたの」



「なっちゃんが………」




また、亜紀は泣きそうになった。
< 472 / 491 >

この作品をシェア

pagetop