モノクロ
「久我っちが点呼に来た時、誤魔化すの大変だったんだからね」


「真央、どうかしたの?」

紗依子が私の顔を覗き込む。


「ジュース……買いに行ったら迷っちゃって……」


……苦しい言い訳。

だけどそれしか思い浮かばなかった。



「真央もどっかでラブラブしてんのかと思った」

「……も、って何よ」


遥のイジワルな言葉に、紗依子は照れたような顔で睨んでいた。



「っていうか、聞いてよ真央」

遥のおしゃべりに勢いが付きそうになった時。


「はーい、その話はまた今度。抜き打ちで点呼に来るようなこと言ってたじゃん? もう電気消すよー」

返事を聞くよりも早く、紗依子はそう言って電気を消した。


……助かった。


暗い部屋でずっと目を開けたままでいたら、次第に規則正しい寝息が聞こえてきた。



目を閉じると、浮かんでくるのはさっきの光景と──唇の感触。


琢磨、どうして……。





眠れない夜を過ごしたのは、久しぶりだった──……。


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