モノクロ
そう、今日はうちの学校で貸し切ってるから、知らない人なんてホテルの従業員の人くらい。



「お前、もっと警戒しろよ」


琢磨が後ろの壁に両手をついて屈んだから、自然と顔を上げた。


え──?



瞬きをする間もなく、唇には柔らかい感触。


すぐに離れたその唇で、琢磨は言葉を紡いだ。



「好きなんだ、お前のこと」



腕の長さ分しかない距離で見つめられる。



瞬間、私は琢磨の胸に手をついて押し返した。

そして、そのまま走り出した。


目の前がゆらゆら揺れ始めた時。


ドンッ



「……高岡?」

「……っ」


ぶつかった相手は久我先生だったけど、私はそのまま背を向けた。


「っ、おい!」





こんな状態で、遥と紗依子がいる部屋に帰れるわけもなくて。


私が部屋へ帰ったのは、どれくらい経ってからだろう。


そーっとドアを開けると、部屋は当然真っ暗だった。


そのまま静かにベッドに潜り込もうとしたら、いきなり部屋が明るくなった。



「どこ行ってたのよー」

遥も紗依子も、ベッドの上に座っていた。


「ごめん……」

遥の顔、見られない……。
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