モノクロ

「お先に失礼しまーす」


最近ミスが少なくなってきたことにうれしくなりながら、駅までの道を歩いている時だった。


「…………」


重なって聞こえる足音に気が付いた。


いつもはそこそこ人通りがあるのに、今日に限っては少なくて。

何となく嫌な感じがした。


携帯を取り出そうと立ち止った時、後ろの足音も止まった。


……つけられてる。


気付いてしまったら、急に怖くなってきた。

駆け込めそうなコンビニもない。


どうしよう……。


携帯を握りしめたまま早足で歩くと、後ろの足音も同じようにスピードを上げた。


やばい、どうしよう。


解決策が見つからないままでいたら、足音が近くなってきた気がした。


駅まで走れるだけ走ろう、と思った時、腕を強く掴まれた。


「っ!」


声も出せなくて、そのまま身を固くした。




「何やってんだよ、マイ」


“マイ”と呼ばれて振り返ると……そこには久我先生がいて。


チッと舌打ちをしたような音の後、足音が遠ざかった。



「……かった」

喉がカラカラに乾いていて、うまく言葉が出ない。


気が付けば、先生のスーツの端を握り締めていて、その手は小さく震えていた。
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