熊野誓紙
熊野大社の参道は 質素である。 いや、これが 刹那、、なのだろうか。
石段と灯篭だけの参道を 登る時  今 私の家から一番近い神社仏閣の
可睡斎のそれと さほどの大差がない印象を深くする。 
春日大社、川崎大師、熱田神宮など、大都市に鎮座する神社群とは 趣を異にする。

だけど、 山門をくぐると現れる境内は、壮麗そのものだ。
ご利益などは わからない。  わからないけど、心に沁みる木々の香りと
建造物の威厳には ただならぬ 何かを感じた。
石段を登る時 小雨だった空は、小雨のままを 私を優しく包む。
札所で 母の名前と病気平癒、、父の名前と家内安全、、私の名前と心願成就、、、
細長い白木に 書いて 納める。
熊野に来る前に いつもの川崎大師にも 同じ文言で 納めている。

母方のジジババの墓前でも お願いしたことを  
本殿の前で、お願いする。
 「母を早く 楽にしてください。。。」
もし、父が横にいて聴いていたら、叱るに違いない。

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