フェーン・ルード・オム・ファイクリッド ~LeliantⅡ統合版~
リリアにも、リュシオスが家族――寝言で呼んだ母と姉は別として――を嫌っているのは明らかだった。すぐに謁見の間に通され、国王や王族と面会したが……リリアが抱いた印象も最悪だった。
リリアは、間に合わせでない礼装姿で、教えられた作法の通りに努力しながら、黙って話を聞いていた。
リュシオスは、国王の誕生日の祭典に出席するために、自らの領地から出向いたのだ。今日は祭典の前の挨拶に来ただけで、すぐに退出しようとした。しかし、国王が引きとめた。城内のリュシオスの私室にて、後に面談ということになってしまった。
何人もいる侍女を無視し、使われていない割には手入れの行き届いた彼の私室で、乱暴にソファに座るリュシオス。
物憂げに、溜息をつく。
本当に、辛そうだった。
「……リュシー……」
リリアが彼の頬に触れようと手を伸ばすと、リュシオスはそれを掴み、
「しくじった」
自嘲気味に、言う。
「やっぱり、ここの流儀じゃ向こうの方が上だ。俺は十の時にここから逃げ出しかたら、慣れていないし……」
「リュシー……」
「そんな顔しなくていい。お前は居るだけでいいんだ」
リュシオスの手がリリアの頬に触れるか触れないかという頃、ノックが響く。
「リュシー、入るわよ?」
「これは姉上。どうなさいました?」
勝手に愛称で呼ぶな。そうは口に出さず、静かに言う。
「あら、ご挨拶ね。一年ぶりに帰ってきた弟に会っちゃ、いけないのかしら?」
リリアも良く覚えていた。この国の王太子。リュシオスの一番上の姉。
彼女は、リリアに視線を移し、
「初めまして。リリアちゃん。部下から聞いているわ。リュシーの愛人だそうね」
「姉上。恋人のリーリアントです」
「あら、そうだった?」
言うなり、リリアの左手を捩じ上げた。痛みに顔を歪めるが、声は出さない。彼女の薬指には、馬車の中で彼が捻じ込んだ指輪が嵌まっていた。それが王家の物であると、彼が王族だと知った後で分かったのだが。
「やっぱり物好きは母親譲りかしら? 王家の者という自覚と誇りはある?」
言って姉は、何人かの女の名前を出した。結婚相手に推したいらしい。リュシオスは丁重に断った。
リリアは、間に合わせでない礼装姿で、教えられた作法の通りに努力しながら、黙って話を聞いていた。
リュシオスは、国王の誕生日の祭典に出席するために、自らの領地から出向いたのだ。今日は祭典の前の挨拶に来ただけで、すぐに退出しようとした。しかし、国王が引きとめた。城内のリュシオスの私室にて、後に面談ということになってしまった。
何人もいる侍女を無視し、使われていない割には手入れの行き届いた彼の私室で、乱暴にソファに座るリュシオス。
物憂げに、溜息をつく。
本当に、辛そうだった。
「……リュシー……」
リリアが彼の頬に触れようと手を伸ばすと、リュシオスはそれを掴み、
「しくじった」
自嘲気味に、言う。
「やっぱり、ここの流儀じゃ向こうの方が上だ。俺は十の時にここから逃げ出しかたら、慣れていないし……」
「リュシー……」
「そんな顔しなくていい。お前は居るだけでいいんだ」
リュシオスの手がリリアの頬に触れるか触れないかという頃、ノックが響く。
「リュシー、入るわよ?」
「これは姉上。どうなさいました?」
勝手に愛称で呼ぶな。そうは口に出さず、静かに言う。
「あら、ご挨拶ね。一年ぶりに帰ってきた弟に会っちゃ、いけないのかしら?」
リリアも良く覚えていた。この国の王太子。リュシオスの一番上の姉。
彼女は、リリアに視線を移し、
「初めまして。リリアちゃん。部下から聞いているわ。リュシーの愛人だそうね」
「姉上。恋人のリーリアントです」
「あら、そうだった?」
言うなり、リリアの左手を捩じ上げた。痛みに顔を歪めるが、声は出さない。彼女の薬指には、馬車の中で彼が捻じ込んだ指輪が嵌まっていた。それが王家の物であると、彼が王族だと知った後で分かったのだが。
「やっぱり物好きは母親譲りかしら? 王家の者という自覚と誇りはある?」
言って姉は、何人かの女の名前を出した。結婚相手に推したいらしい。リュシオスは丁重に断った。