フェーン・ルード・オム・ファイクリッド ~LeliantⅡ統合版~
「……俺は直系の中では一番末席だからな」
 姉が帰った後、リュシオスが呟く。
「俺が王位を継ぐことなんてない。王位継承権なんてただの飾りだ。それでも、やっぱり王族以外から見ると魅力らしい。俺を婿にすれば、正統な直系王族の肩書きが手に入るからな……。
 道具だよ。他にも、外交とかに使えるらしい。人質とか」

 ――疲れている。

 彼の自嘲気味な言い方に、リリアはそう感じていた。初めて会った時に、いきなり無茶を言って彼女を困らせた人物とは思えない。

 と、リュシオスは微笑み、
「初めて会った時な」

 疲れた微笑。しかし、これがリリアが初めて見るリュシオスの笑顔だった。

「ちょっと困らせてやる……それだけのつもりだった。一目で気に入ったんだ。お前が。
 ちょっとからかって、お茶を濁して終わるつもりだった。

 でも……どうしてだろうな。気がついたら、お前の手を引っ張って連れて帰っていた。
 権力を振りかざして……。こんな力、まっぴらなのに、な。

 ……もっと他の手段でお前を口説いていたら、後悔も無かっただろうな」

 言い、彼女の頭に手を置いたとき、外の空気が変わる。

「親父が来る」
 言うなり、彼女を抱き寄せ、唇を奪う。

 今は、これで充分だった。父王との会話にまで同席させるつもりはない。
「ごめん」
 顔を離すなり言うと、奥の部屋に彼女を押し込め、

「父上が帰られるまで出すな」
 側にいた侍女に言う。その言葉通り侍女二人に阻まれ、リリアはただ、扉越しに話を聞くしかなかった。

 リュシオスが母親に似てきたと、王は言った。殺された母親。

 リュシオスの母親には、元々夫がいたらしい。彼との間の娘も。しかし、彼女の美貌を気に入った王が婚姻を無効にし、それでも従わなかったために夫を殺したのだ。彼女は、娘の存命を条件に王の側室となった。そして、リュシオスが生まれた。

 だが、リュシオスが十歳の頃、王は側室に飽きた。姦通罪を捏造し、処刑したのだという。その時に、リュシオスの、父親の違う姉も殺されたらしい。

 残ったのは、末席王族のリュシオス一人。

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