フェーン・ルード・オム・ファイクリッド ~LeliantⅡ統合版~
 何故、王がこのような話をしているのか、リリアには最初は分からなかった。だが、すぐに理解する。

 リリアが――彼女自身が次にそうなると、言っているのだ。
 リュシオスが大人しく政治の道具になるならそれで良し、そうでなければリリアが母や姉のようになると、そう言っているのだ。

 リュシオスは国王たちの道具。玩具。そして、リリアが彼を縛る枷。

 リュシオスは、脅しを突っぱねた。毅然として。
 国王が帰ってから、リリアを奥の部屋から出し、左手に捻じ込んだ指輪を外し、投げ捨てた。抱き締めると、

「ごめん。連れて来るんじゃなかった」
 そう言って、また唇を重ねる。涙を流しながら。

 憎い男の息子でも、愛してくれた母と姉。そして、リリア。

 彼女が側に居てくれれば、乗り越えられそうな気がした。だが、独りよがりに気づく。

 どうすることもできない。ただ、彼女に不安を抱かせるだけだ。

 やっと、気づいた。

 リリアは、思いがけないファーストキスの感傷に浸る余裕も無かった。


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